出展作家さんへのインタビューリポート |
一つひとつの作品が物語をもつ「陶の棲(すみか)」
会場を歩いていると、誰かにじっと見つめられているような気配……。
視線の元をたどると、渡邊亜紗子さんの手がける陶人形でした。
何か語りたがっている表情の陶人形。タイトルは「かくれんぼ」
「語りかけてくるような造形物と、食卓を楽しくいろどる器をつくっています。
『これはなんだろう?』と想像をふくらませてもらえたらうれしいです」
と渡邊さん。
「絵本」と名付けられたお皿。購入された方は「作品に人柄が出てるね」と
奇妙な中にもあたたかさを感じる表情のオブジェは、渡邊さんがおっしゃるように、
見る人に語りかけているかのよう。かわいらしい絵や彫りがほどこされた器は、
使い心地もよさそうです。
「かくれんぼ」「ねぼすけ」など、一つひとつ名前を与えられた作品たち。
眺めていると、まるで物語の中に入ってしまったように感じます。
お客さんとにこやかに話す渡邊さん
美術大学を出てから、造形物の粘土原型をつくる仕事に携わっていた渡邊さん。
次第に陶芸の魅力に魅せられ、成形技法や釉薬の調合などを学ぶべく
陶芸の学校に通われたのだとか。作家活動を始めてからは、
イベント出展やギャラリーでの展示も精力的におこなっています。
出展先は東日本が多く、「現在は、関西での出展は姫路だけなんですが、
ここから広がるつながりもあります」と話します。
そんな渡邊さんがかねてから挑戦したかったのは、絵付けの器。
時間に余裕ができたコロナ禍に試作を重ね、販売を始めました。
「陶芸は、焼いてみないと実際の色や大きさがわかりません。
自分の作風を確立するまでに試作の時間が必要だったので、よい機会でした」。
こんな箸置きがあれば、食卓が楽しくなりそう
「出会った人や風景からイメージが湧いて生まれる作品もあります」と、日常の小さな気づきも丁寧にすくいとる渡邊さん。
その飾らないお人柄と世界観に惹かれ、たくさんの人が彼女に会いに足を運んでいました。