2025 出展作家さんへのインタビュー① |

銀細工を制作する内藤伸也さんと陶芸作家の陽子さんのご夫妻による〈銀陶屋〉。
あたたかみのある輝きを放つ銀細工、やさしい風合のうつわが並ぶブースに、
おふたりを慕ってたくさんの人が訪れていました。

平皿や塩壺、すり鉢。思い思いにうつわを手に取るお客さんの問いかけに、気さくに応える陽子さん。
マグカップを購入された女性は、「素敵なデザイン。軽くて使いやすそうね」
カップ下部に描かれた繊細な模様は、
ぺースト状にした粘土をケーキのデコレーションのように絞り出す“いっちん”という技法を使ったもの。
「シックな中にも模様を入れたくて、何度も練習しました」と陽子さんは話します。

陶芸教室も開いているという陽子さん。大学で陶芸を学び、作家として活動を始めて20年になります。
小さい頃から絵を描くのが好きで、高校時代には美術部に所属。
顧問の先生の助言がきっかけで、平面の絵よりも立体作品を作る楽しさに目覚めたのだとか。
「先生と出会っていなかったら、この道に進んでませんでしたね」と振り返ります。

シンプルな作風を貫きつつ、「時代にあった要素も取り入れ、こんなのあったらいいなと思うものを作っています」
作るうえで大切にしているのは、使う人の目線に立ったひと手間。
「うつわは毎日使うものだから、軽くて使いやすいものを」と、
薄くても丈夫な仕上がりになるよう粘土を密にし、高温でしっかり焼き締めます。
また、マグカップの持ち手を、握力が弱い人でも持ちやすい形状にするなど、使いやすさを追求し改良を重ねてきました。
そんな思いで作っているからこそ、買ってくれた人からの言葉は励みに。
「『毎日使ってるよ』と言ってもらえると、泣きそうになるほどうれしいですね」と目を細めます。

一方、指輪やネックレスなどのシルバーアクセサリーを手がける伸也さん。
銀板を手で切り出し、叩いて形をつけ、継ぎ目を接合し、磨いて仕上げる
……さまざまな工程を経て生み出される銀細工は、まさにハンドメイドの真骨頂。
「長く使ってほしいから、シンプルで飽きのこないデザインに。
着け心地のよさをいちばんに考えて作っています。
指輪であれば、肌に当たる内側を手磨きしたり、指のあいだになじむ形にしたり。
手に取って、実際に着け心地を確かめてもらえたら」と話します。

彫金教室でスキルを習得し、作品づくりを続けて24年。
初めての出展は、姫路の百貨店の催事だったそう。
「24年と言っても、この世界ではまだまだ中堅ですよ」と控えめな伸也さんですが、
「磨くほどに光沢が増すところに作るおもしろさがあります」という言葉からは職人の気概を感じます。

天然石を据えたものやハンマーで槌目模様をつけたもの、いぶし銀の加工を施したもの。
表情豊かな作品の中から槌目模様の指輪を選んだ女性は、
「この模様が決め手です」と手もとを見せてくださいました。
「着けていて楽しい」「着けて出かけたら話題に上ったよ」
といったお客さんからの声が制作の励みになるという伸也さん。
この日は修理やオーダーを依頼する人も多く、一人ひとりに丁寧に対応されていました。
「皆さんが楽しんで、素敵な出会いを持って帰ってくれたら」と話すおふたり。
作るものは違っても、使い手のことを思いやる気持ちは同じ。
作品にこめられたひと手間が、おふたりとお客さんをつないでいるように感じました。

